この問題を正確に回答するには、裁判所から買受たAとかんなんさんの間の権利関係を明らかにしたうえで、現在の「新たに契約しようとして敷金を預けたが、考え直して引っ越すことにした。預けた敷金の返済は?」を考えなければなりません。
その権利関係は現在の実務で約80%以上が買受人が強い権利を持ち、賃借人は弱いので、そうだとしてお答えします。
「権利が弱い」と云うことを逆に云えば買受人は賃借人の何らの権利も義務も負わないと云うことです。ですから全く新しく契約したと云うことになります。(そうではなく承継関係ならもっと煩雑になります)そこで大切なことはその契約が一旦成立した後、かんなんさんの都合で解約したのか、それとも、契約しようとしていたが、まだ契約していない段階で「明け渡すことにした」かが、はっきりしません。文面からですと正式な契約はしていないようですが、契約していないで「敷金」とはあり得ないことですから渡したお金は単なる「預り金」と云っていいと思います。そうであるなら遠慮なく全額返してもらって結構です。万一、契約が成立していて、敷金として預け、その後、解約したと云うなら契約書に記載されているクロスの張り替えなどの費用は支払わなくてはなりません。契約の存否は双方印が押してあるかが一応の目安です。